25人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
穏やかでのどかな小春日和。
燦々と降り注ぐ陽光は暑すぎず、時折吹き抜ける春風が心地好い。
土曜日といえど部活動で多くの生徒が登校しているらしく、広い校庭のあちらこちらから賑やかな喧騒が響き渡る。
そんな晴れやかな気分は予兆なく崩れ去った。
「おじょーさん、何してんの?」
「何、迷子?つか何で私服?」
「あれじゃね、転校生!」
人の目の前にいきなり現れてはどこか下卑た笑いを浮かべる3人の男子生徒。
制服姿ということはきっと部活終わりで、今日は午前練習だったのだろう。
肩から下げた大きめの鞄から察するに多分テニス部。
推察に推察を重ねて人となりを判断していると、真ん中にいるひと際上背のある生徒がふと声を漏らした。
「あ?何で男の制服持ってんの?」
「――…」
何でってそれは。
「男だからですが…」
静まり返ること半秒。
すぐさま巻き起こった笑いには、愚弄と嘲りが入り混じっていた。
最初のコメントを投稿しよう!