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「ーーえ。ユーリ様が?」  耳にした情報が信じられなくて、私は声をあげた。  隣国アッシュベルの第二皇子にして私の元婚約者であるユーリ様。彼が、もう一度私との婚約を望んで書簡を送ってきたのだという。    ええ?  はっきり言って意味がわからない。  婚約を破談にしたのはこちらが先だ。政変のごたごたに紛れての事だからあまり問題になっていないが、本来なら大ごとだ。  一方的に破談にされて、向こうとしては顔に泥を塗られたも同然だろう。なのに、なんでまた。  でも、驚くのはこれからだった。 「ーーえ? この城にいらっしゃるの? ユーリ様が?」  いくら皇太子じゃないからといっても、第二皇子が、政変が起こったばかりのこの国に? 「しかもアランが断らなかった?」  あの、アランが?  私が他国に嫁ぐことを王位を簒奪してまで嫌がったあの弟が、嫁ぎ先だったユーリ様が来るのを、認めた?  そんな、あり得ない。 「いったい、何がどうなっているの・・・・・・」  人間、許容範囲を大きく超える問題にぶち当たると、頭が真っ白になってしまうらしい。 「・・・・・・今日もいい天気ねー」  情報を持ってきてくれた侍女や護衛騎士を放置して、私は思わず空を見上げ現実逃避してしまった。  そんな事をしても何も変わらないのはわかっているけど、束の間の平穏を求めて。  ーー隣国からユーリ様がやってきたのは、その数日後だった。
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