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「いえ? そんなことは。ただ、リーズシェラン姫のように繊細な方が恐ろしい政変に巻き込まれたりしないで良かったと、そうお伝えしたかっただけですよ」
にこにこと、裏など無さそうな笑みと浮かべるユーリ様。・・・・・・だけど、言葉ではしっかり政変を起こしたアランを皮肉っていたりする。
アランの笑みが深くなった。
「・・・・・・へえ。まあ、それはいいですよ。それより、今日を含めてもたった二回しか会った事の無い姉様が繊細だと、よくわかりましたね」
「それはもう。私は姫の虜ですからね。ただ、確かにまだ姫のことを十分に知っているとは言えません。姫、よろしければこの後、中庭を案内してもらえませんか? お互いをもっとしるために」
「・・・・・・中庭を散策したいのなら侍女を使ったらどうですか? そこの侍女ならうちの城にも詳しいでしょうし」
表面上はあくまでもにこやかに。実際にはぎすぎすとした際どい会話が繰り広げられる。
私に向けられたユーリ様の誘いも、返事をする前にアランが叩き返した。
そして今、アランが冷ややかな目を向けるのは、後方に控えている侍女の一人ーーリーシャだった。
リーシャがアッシュベルの者だという話は聞いていた。
どうしてリーシャが、私の所に潜り込んでいたのかはわからないけど、悪い印象は持っていない。
国に戻った後、任務失敗とかで酷い目にあわされていないといい。
そう思っていた。
そんな、もう会うこともないだろうと考えていたリーシャが、ユーリ様の後ろから何食わぬ顔で現れた時の驚きといったら・・・・・・。
声を出さなかっただけでもマシだった。私の後ろに控えているレナードも驚いたらしく、息を飲んでいたし。
アランは事前に知っていたみたいだけど。
私もアランと同じようにリーシャを見た。
リーシャは背筋を伸ばして立ち、目を伏せて何の表情も表していない。・・・・・・いったい、なんなのかしら。
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