流星山の夜空に「具体的な」願いを

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 願い事を叶える条件は三つ。  流星山の山頂で流れ星を観測すること。流れ星が消える前に願い事を言い切ること。そして願いはできるだけ具体的なことの三つだ。  前二つの条件は理解できる。だが、最後の「できるだけ具体的な願い」とはいったいなんだろうか。そもそも具体的とはどこまで言えばいい? 流れ星が消えるまでに言わないといけないのだから、あまり長々と説明できないだろう。 「どこまで具体的であればいいのか、解説があればいいんだけど……うん?」  視線を地上に戻すと、白い立て看板を見つけた。  そこには赤い文字でこう書かれていた。 『流星は複雑な願いを叶えるとき、しばしば願いの具体性に頼る。曖昧で抽象的な願いでは届かない。警告する。想像力の無き者は願いに喰われるであろう』  なるほど。抽象的な願いは避けろ、ということなのだろう。例えば、モテたいがために『イケメンになりたい!』と願うとする。しかし、これでは漠然としていてわかりにくい。『小顔で、目は大きくてで、髪はサラサラで、肌はスベスベの顔にしてくれ』と願うべきだろう。 「『具体的な願いを言え』というよりは『抽象的な単語を使うな』のほうがしっくりくるな」  具体的の意味がわかったところで、再び夜空を見上げる。  とても静かな夜。冷たい空気を肌で感じながら、来るかわからない流れ星を待ち続けた。
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