1.ハラヘリさん

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 なんてことがひと月ちょっと続いたあと。仕事が落ち着いたのか、パタリと彼の姿は見えなくなった。    どこか寂しいけれど、たまたまの偶然の出来事だったのだから仕方ない。   「はあ……」    決して寂しい訳なんかじゃない。  そもそもどこの誰かも知らないし、連絡先だって交わしてないし。    たまたま出会ただけのちょみっと……いや、けっこう変態臭いひとだったけど。   「はあ」    また溜め息をついて、箸を置く。さっきからぜんぜん食がすすまない。    珈琲と煙草。それに低く心地のよいバリトンボイス。大きくて温かい手のひら。  美味しいものは最後に食べる派なので、いつも私と取り合いになる。   「べ、別に寂しい訳じゃないんだからっ」  言い訳なんかじゃないんだからねっ!
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