1484人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
なんてことがひと月ちょっと続いたあと。仕事が落ち着いたのか、パタリと彼の姿は見えなくなった。
どこか寂しいけれど、たまたまの偶然の出来事だったのだから仕方ない。
「はあ……」
決して寂しい訳なんかじゃない。
そもそもどこの誰かも知らないし、連絡先だって交わしてないし。
たまたま出会ただけのちょみっと……いや、けっこう変態臭いひとだったけど。
「はあ」
また溜め息をついて、箸を置く。さっきからぜんぜん食がすすまない。
珈琲と煙草。それに低く心地のよいバリトンボイス。大きくて温かい手のひら。
美味しいものは最後に食べる派なので、いつも私と取り合いになる。
「べ、別に寂しい訳じゃないんだからっ」
言い訳なんかじゃないんだからねっ!
最初のコメントを投稿しよう!