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クリスマス・デート
その日、部下達が帰った後、いつもの1.5倍のスピードで残務を片付けた俺は、指定の店に足を急がせていた。
約束の時刻は8時ジャスト。
間に合うかどうかは微妙なところだが、ふとあるショウウィンドウに目が止まり、足を止めた。
そうか、
ここんとこ忙しかったとはいえ。
俺としたことがクリスマス・デートにプレゼントも用意していない。
アイツにはやっぱり…コレだろう。
「すみません__」
フフフ…
『ええっ、これを私に?』
嬉しそうな彼女を思い浮かべると、どうしても顔がフヤけてしまう。
数分後、大きな白い紙袋を下げて俺は店を出た俺は、歯をくいしばって顔面の崩壊に耐えながら、彼女のもとへ足を急がせた。
8時と2分。寄り道分の遅刻だ。
ビルの谷間のこじんまりとした瀟洒な店は、一見お断り、予約は5組限定で、出すのはお任せコース料理店のみという、人事部長から受け継いだ勝負店。
雰囲気も味も、置いているワインも確かだし、会社の奴に会うこともまずない。
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