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_ちっくしょおおおおっ!!!
ゆるせ赤野。
俺は、俺の出世を失うわけにはいかない_
止めどなく溢れる涙もそのままに、俺は賑やかな街道をひた走った。
イルミネーションの溢れる光が、幸せそうなカップル達の笑い声が、後方へ流れて消えていく。
これでも高校時代は野球部、ランニング10キロは日課だった。
…補欠だったけど。
そして10分後。
息を切らしながらホテルのエントランスに到着した俺は、エレベーターで最上階へと向かった。
オベリスク調に設えられた鏡に向かい、乱れた服装とヘアを直し、汗を拭いて深呼吸、息を整えるまで30秒。
社長の前に出た時は、まるで何事もなかったように優雅な表情を取り繕った。
「遅くなりまして」
「やあ、すまないね大神君。
お楽しみのところを呼び出してしまって」
彼はエレベーターのすぐ目の前の廊下で待っていた。
マッタクこの御方は…
こんな時でも、50も半ばとは思えないほど精力的に白い歯を輝かせて笑う。
「いえ、とんでもございません。
それよりも社長…」
俺は努めて冷静な風を装った。
サッと社長の耳に近づくと、声を落として嗜める。
(デートのダブルブッキングなんかするからですよ)
(いやあ、まさか鉢合わせするとは思わなくてね…
待ち合わせ時間はずらしたつもりだったんだが)
(想像つくでしょうが!フツー)
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