出世と恋

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「………。  で、優能な大神君、キミの出番だよ」  バツが悪そうに俯いていた社長は、急にパッと顔を上げると、俺に “808号室” の鍵を渡した。 「そこで凶暴化した松嶋くんが待っている。  私は、スゥイートルームの原口くんの所へ行ってくるから…くれぐれもよろしく頼むよ? じゃ」  ハハハハハ…  こと女性に関して、決して年齢を感じさせない社長は、意味不明の笑いを残して消えていった__  今宵は聖夜、  クリスマス・イブ    恋人逹の甘い夜。   「キーっ、悔し~っ。  何であの女がスィートで、私がツインなのよ~っ!  ちょっと聞いてる?大神くんっ」 「聞いてます、聞いてますとも」  最高級ホテルの一室で、社内1の美女と2人きり。 「原口さんは10日前に始まったばっかりだから。  ホラ社長、子供みたいなとこあるでしょ。今は新しい玩具(オモチャ)が珍しいだけ、社長の本命は貴女ですって」 「ホ…ホント?大神君」 「ホントホント…」 「………。  ウソよ、ウソだわやっぱり。  だって大神君、社長(カレ)の犬だもん。  社長(カレ)、私にはもう飽きちゃったのよ。ウ、ウワーンッ」 「そ、そんなことはないっ……  …松嶋さん…苦ひ…」  一切手を触れることなく、ひたすら宥める。  それが、俺に課せられた『主命』だ。
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