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彼女の指が触れた瞬間、ふと芽生えた邪心。
俺は___
「やぁっ…だっ」
次の瞬間、唇にかかった人指し指を、チュッと吸い上げると、小さな錠剤だけを絡めとった。
「も、もうっ、
何するんですかっ」
耳まで真っ赤にして怒った顔に、悪戯っぽく微笑みかける。
「バ~カ。
お前が変なコトするからだ」
大体さ、男の一人暮らしの家で、少し無防備に過ぎやしないか?
今日はこのくらいで止めてやるが、今度元気な時にナメたマネをしたら……
彼女はプンプン怒りながらも、キッチンから水を汲んできた。
それを俺に渡すと、
「ちゃんと飲んでから寝てくださいね?ね?」
何度も何度も念を押してから帰っていった。
____
真っ暗になった部屋。
彼女の言いつけを律儀に守り、ずっと横になってはいるが、昼間寝たせいかよく眠れない。
暗がりの中、さっきまで彼女がいた場所を見ていると、不思議に頬が緩んできた。
_あ~あ、チャンスだったのにな_
どうやら俺はまだ少し、このどうしようもない胸苦しさに付き合わなければならないらしい。
ま、そんな気持ちすら受け入れて楽しめるのが、本当の “大人の男” なのかもな。
あ~、ダメだ。また熱上がってきた……
ーおわりー
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