第7章 ブラザーフット(つづき)

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そして、 「うん、すごく美味しい」 ニッコリ笑う彼に私は、ちょっと眉を寄せる。 「冠くん。お料理中は、約束違反」 だが、「ごめんなさい」と言う彼は、まったく悪びれた様子もない。 もう――。 そんな彼に、私も苦笑するしかなかった。 こうして羊羹も蒸しあがり、今度こそ本当に二人で味見。 「うん、美味しくできたね」 「うん」 お互いにもぐもぐと味わいつつ、微笑み合う。 しかし、それからフッとなぜか視線を落とした彼がポツリと言う。 「ナッちゃん、ギュッてしたい」 どうやら、羊羹づくりで多少紛れていたものが 作り終えた今、再び頭をもたげたらしい。 だから私も、素直に頷いた。
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