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「!?」
え、なに、なにこれ、なに?
玄関を開けた先には女の死体が横たわっていた。長い黒い髪と白いカーディガン、薄いピンクのスカートが真っ赤に染まっている死体。ここまで這ってきたのだろうか、引きずったような血痕が足元まで伸びていて、その先は血溜まりが痕を消していた。
何も考えられなくなり、硬直する。全身から汗が吹き出し、動悸とめまいが襲う。はっ、はっ、と短く口で呼吸するのもやっとだ。
かぁ、と近くのカラスが鳴いたことでハッと気が付きすぐに家の中にはいって鍵を閉める。
「健太…?」
「!」
驚いて勢いよく頭を上げる。
「み…ずき…」
「どうしたの…?朝から元気だね…」
まだ眠そうな顔をしながら体を壁にもたれさせる水希。普段あまり慌てない俺を見て面白がってるのか、少し楽しそうに笑っている。
「水希…いま、その、外に…」
「なぁに?虫でもいたの?虫で怖がるなんて健太も意外とビビリですなぁ」
ヘラヘラ笑いながら俺を押しのけ玄関を開ける。
「へ…?」
水希もあの死体を見て硬直する。そんな水希の後ろから俺も様子を伺う、と
ビタッ!!!
と死体が床に手をついた。
「きゃっ…!」
それを見ると同時に水希が小さな悲鳴をあげ、俺は部屋のドアを閉めてカギもロックもした。
「け、けいさつ…」
水希が震える手で携帯を出す。緊急のボタンを押し、数字を打ち込もうとした手をパッ、と反射的に押さえた。
「健太…?」
なぜだかわからないけど、警察に連絡したらダメな気がした。咄嗟に手を押さえたが、水希に説明出来る理由が無かった。
「その…相手が、誰だかわからないし、変に刺激しない方が…」
目を伏せながら言う。そんな様子に水希は不安そうな顔になりながらも頷いてくれた。
「とりあえず様子を見てみよう」
自分が不安なのを悟られないようにそう言ってみせる。水希はまだ不安そうなままだ。ここは俺がしっかりしないと…そう思いつつ、のぞき穴を覗いた。
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