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ギョロ
と、向こうの女と目が合う。
「うわぁぁぁ!!!」
ヤバイ、ヤバいってこの女!
とにかく隠れなきゃ…ヤバイ…!
水希の手を引きクローゼットの中に隠れる。狭い中に必死に2人で身を潜め、扉を閉める。
「そうだ、包丁…」
何かの時の為に持っておかないと…ふとそう思い、急いでクローゼットから出て、キッチンに向かう。流しの下の扉にある包丁を1本抜くと、少しだけ安心した。身を守れるものがあるだけで幾分か気持ちが楽になった。きゅ、と包丁を握りしめるとガチャガチャ!とドアノブが乱暴に回された。
驚いた俺は包丁を震える手で構えながら後ずさった。もう少しでクローゼットに手が届く位置まで来た時、ゆっくりと鍵のツマミが回った。
ギギィ
不快な音を立てて扉が開くと同時に、俺はゆっくりとクローゼットの扉を閉めた。
「大丈夫…?」
水希が小声で聞いてくる。俺はなんて答えればいいか分からず、目を合わせるしか無かった。
ギシ、ギシ、と鈍い音をたてながら家の中にそれがはいってくる。歩く度に血が垂れているのか、ポタ、ポタ、という音も一緒に聞こえてくる。その不規則な二つの音が重なり、より一層不安を掻き立てる音になっている。
「…た」
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