3人が本棚に入れています
本棚に追加
「へ?…あぁ、これ、付き合って1年記念に買った指輪…。」
こんな時に指輪?と思いつつも応える。水希は指輪に目を向けたままだ。
「嬉しかったな、1年記念なんて、まだまだ短い記念日なのにこんな高い指輪買ってくれてさ…。いいの?って聞いたら絶対別れないから大丈夫、なんて」
「そ、そんな事言ったっけ…」
急に恥ずかしくなる。俺はそんなカッコつけたこと言ってたのか…
「高いって言っても、2人で5万ぽっちじゃん」
「何言ってるのよ、すごく高いじゃない。簡単に他人に出せる金額じゃないよ?」
困ったように笑って手を握る水希。そう言えば水希は昔から奢られたりするのとか嫌っいた。負担をかけたくない、とか自分が食べたんだから、とか言って自分で払ってたっけ。でも、記念日とか誕生日で俺がカッコつけたい時は素直に喜んでくれてたなぁ…。
あれ?
そう言えば今年は記念日祝ったっけ?今日は何日だ?この女から上手く逃げられたら手帳をみて、ちゃんと水希にプレゼント用意してやらなきゃな
「そこ…?」
!!!
女がくるりとクローゼットの方に振り返った。ハッと我に帰り、落ち着きかけた心臓がまた速くなる。
女はフラフラとよろめきながら立ち上がり、クローゼットのほうに向き直る。
顔は髪の毛と血でよく分からない。玄関にいた時はうつ伏せで倒れていたから気づかなかったが、腹がパックリと切られていた。少しだけ腸の様なものも顔を覗かせている。
ずり、ずり、と足を引きずりながらこっちに向かってくる女。ゆっくり、だが確実にちかづいてくる。
最初のコメントを投稿しよう!