第1章

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千晶の言うように高村くんに気持ちをちゃんと伝えて、もっと話し合えば、事態は変わっていたのかもしれない。 だけど… 「自分の本当の気持ちが分かったって、もう遅いよ。 別れたんだもん。」 「じゃあ、忘れなよ。 優人の事務所に入るなんて考えないの。」 「千晶は短絡的なんだよ。夕貴は優人が好きって気持ちが押さえきれなくて、苦しんでるんでしょうが。」 「堂々巡りでしょ?レイで優人の事務所に入っても夕貴の気持ちは出せないよ。その上バレたら優人に迷惑がかかるし…。 優人の気持ちもわからないし… もし彼がまだ夕貴を好きだったら、彼を苦しめるよ。 彼のことを考えるのなら、別事務所でやっていくしかないじゃない?」 「そうだね、側にいたらよけい辛いかも。」 二人の言う通りだ。別の事務所に入るしかないんだ。 一緒の事務所になんてワガママだ。 玲子さんが事務所に持ち帰って話し合ってくれている。 例え彼の事務所に入れると返事をもらっても、他の事務所に入るしかないんだ。 高村くんは社会に出て責任を背負いながら仕事をしている。 アルバイト感覚の私が彼の近くに行けば、彼を苦しめるだけだ。 好きでもどうにもならないことがあるってことは、もう一度経験している。 近付いてまた同じ思いをするなら、彼に近づかない方がいい。 七海たちと話してやっと踏ん切りをつけることができた。
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