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翌朝。
登校すると既に佐原くんがいて、私の席の方を向いて座っていた。
私の席がそこにあるのだから、嫌でも行かない訳にはいかない。
周りに女の子がいないのは不幸中の幸いかな。
「南城」
佐原くんは自分の机に頬杖をついてにっこりと笑っている。
「…はい」
「お前は一鷹の何処がいいの?」
第三者が聞いたら誤解を招きかねない聞き方だ。
「…優しくて誠実な所かな」
教科書を机に仕舞いながら答えると、佐原くんは
「俺も優しいし誠実だよ?」
と言う。
今まで見た事のある佐原くんの姿が脳裏に浮かんで、私は無意識に口を開いていた。
「あのねぇ、誠実って自分でいう言葉じゃないの」
それに、
「女の子に適度な距離感で接してる一鷹くんに対して、佐原くんは髪の毛触ったり腰に手をまわしたり、私から見るととても誠実とは思えないけど」
言い終わって私はハッとして佐原くんを見ると、彼の顔から笑みが消えていた。
咄嗟にフォローを入れる。
「で、でも双子だからって比べるつもりもないけど。
佐原くんには私が知らない良いところが沢山あるからファンも多いんだろうし」
別に佐原くんに好かれたい気持ちは無いのに、私は何を慌ててるんだろう。
佐原くんが口を開いて何か言おうとしていた所に、救世主、前の席のお友達登場。
彼が抵抗する佐原くんを無理矢理前に向かせたところでタイミング良く先生が入ってきたので、そのまま朝礼が始まった。
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