5人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
予鈴がなって、遂に佐原貴臣くんが友達と一緒にこちらにやってきた。
「相変わらず貴臣モテるよなー!
俺にも女の子紹介しろよ」
「ヤダよめんどくせーし」
チラっと横目でその姿を確認する。
佐原くんは双子で。
実は兄とは同じ部活なのだ。
でも二卵性の双子らしいし、あんまり似てない、かな?
考えながらぼんやり見ていると、当人と目が合ってしまった。
「えーっと、南城さん?
これからよろしく」
私の机の名前を確認すると、にっこりとわざとらしい笑顔を向ける佐原くん。
右手は握手を求めている。
「えっと、ごめんなさい」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
たちまち佐原くんの顔が曇る。
前の席では彼の友人がおもしろそうに笑っている。
「一鷹(いちたか)くんの弟って聞いたから、似てないなって思って見てただけで…ごめんなさい」
私は極力彼と目を合わせないようにして、再度謝った。
「ふーん。
あいつの知り合いなんだ」
そう言って佐原くんは黒板の方に向き直った。
最初のコメントを投稿しよう!