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「趣味嗜好はどちらでも構わない。ガラス玉は集めて眺める楽しさもあるからねえ。宝石は身を飾るものでもあるから、知っておいてほしくてね」
「はいっ! 大事にするね」
ティオは宝箱に鍵をかけて、なぜかベッドの下に隠してしまうと、鍵だけを書棚の前に置いた。
それきり、ティオは何かを拾ってくることはしなくなった。
子供の無邪気さを奪ってしまったかな、とかすかに後悔したが、本物ではない、と目が見抜くようになったのだろう。
成長してるんだな、と思う。たったの半年で何ができるんだと思っていたが、ティオの変化に立ち会うと、それも間違いではないとわかる。
本気で、主の好みに仕上げることもできてしまう。
ティオを成人させ、それから何人も養育して独立させている天使もいる。
わかる気がする。短期間に結果が出るせいもある。楽しいのだ、純粋に。
「ノーラ、掃除した侍女がこんなものを見つけてね。覚えている?」
「あっ!」
わあ、と目を輝かせる。
「ぼくの宝石箱だっ!」
鍵、鍵、と探しだすノーラに、先回りして見つけていた鍵を手渡す。
「うわあ、ぼく何を入れてたんだろ。あんまり覚えてないなあ」
鍵を回し、カタンと外れる音がした。そうっと蓋をあけると、白いふわっとしたものが溢れかえった。
「うわあっ!」
それは、私の羽根、だった。
「ぼくったら、あなたの羽根、こんなに集めてたんだ……」
「…………ちょっと言っていい?」
「ひ、ひかえめに」
「気持ち悪いから捨てて」
「う……っ」
仕方ないか、と言いながら片づけていくと、桃色の宝石を摘みあげた。
「うわ、懐かしいー。ぼくこれ眺めるの好きだったあ」
「それ、見た目は普通の宝石だけど、君が思うより希少価値あるからね」
「バーランド公爵……」
「はい……」
「今ならぼく、この石の価値わかるから」
「はい」
「身につけられるように加工してほしい」
「……わかりました」
なるべく石を削らないように装飾をつけて、襟元にでも飾ってやろうと思う。
懐かしそうに道端の石も眺めて、どうするのかなと思っていたら、元に戻して状態のいい羽根をひとつ入れている。
「よく見たら、この箱も価値あるよね……」
「まあ、そうですね」
「ぼく、今は飾る宝石もいくつか持ってるから、ここに入れて使うよ」
「そう」
無造作に箱を片手に掴んで、やはりベッドの下にしまうノーラに、本質は変わらないのかな、と思う。
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