17人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてトドメは……あの日の出来事だった。
「松野さんが貴方が見てない隙に酒に睡眠薬入れて眠ったところを居酒屋から部屋に運んだの。
だから私はあの時、貴方に抱かれてない。ただ、隣で“寝た”だけよ」
はい、残念でしたと舌を出して俺を蔑む。
「何も知らない顔で私を見る貴方が面白かったし、夏奈がキィーキィーうるさく騒いでたのもお腹痛くなるくらい最高におかしかったわ」
全てを聞いて俺は体全体の力が抜けてへなへなと地面に座り込んだ。
「まだとっておきが待ってるから」
そう言って恵は座り込んだ俺に視線を合わせる。
「めぐみ!」
そんな彼女を俺は強く抱き締めた。
「貴方が私に本気になるのは分かってたから、とってもやりやすかった」
「恵、俺ともう一度やり直そう?」
「白は簡単に黒になれる。でも、一度黒になってしまったらもう二度と白に戻ることは出来ない」
俺はどこか覚悟したような恵の顔が忘れられなかった。
「私は黒なの……白には決して戻れない……」
「どういうことだよ」
彼女は俺の腕からするりと抜けて屋上の端まで移動した。
最初のコメントを投稿しよう!