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高校最後の大会。バドミントン女子ダブルス決勝。
私はどうしてもこの試合に勝ちたかった。相棒であるユウのため。
コートサイドのベンチで私は目を瞑り、一息深呼吸する。いつものおまじない。
吐く息が震えている。“あれ? 私すごく緊張しているかも。”
普段こんなことないのにと手のひらを広げて見てみると、すでに汗ばんで少し震えている。
「先輩のほうが私より緊張してる。ふふ。」
ユウはそう言って、私の手をギュッと握って落ち着かせてくれた。
「先輩、今日は手の汗ばみ、一段とヤバい。」と揶揄いながら。
『うるさい。』
“誰のせいでこんなに緊張してると思ってるの!”と内心毒づいたけど、“あぁ私誰かのために戦うのって初めてかも”と気づく。
「私、ここまで来たら勝っても負けても後悔はありません。ただ、この試合を先輩と楽しみたいです。」
うそ。昨日も負けたくないってこっそり泣いていたのを私は知っている。
“後輩に気を使わせてるようじゃまだまだダメね。”
相棒の手を握り返して、もう一度深呼吸する。よし。
『誰が負けるって? ユウ、勝つよ!』
「はい!」
いざ、決勝戦のコートへ。
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