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Aコートに到着すると、相手コートには既に大人が何人かいるみたい。
“ユウちゃんって子はどこかしら?”
チラチラ見ながらそれとなく探していると、主審から選手集合の号令がかかる。
慌ててラケットを持ってコートサイド中央に向かうと、相手コートからも誰かがずんずん近づいてくる。
“あれっ? 大人?”
“ん? ゼッケン付けてる”
“…ってことは…この子がユウちゃん?!”
『………、デカッ。』
思わず声に出てしまった。これが彼女の第一印象である。
身長はママぐらいありそうだから、既に160cm以上あるかもしれない。
髪は短めで、男の子っぽい。本当に5年生?
“真稀ったら、偵察するなら、ちゃんと身長が高いとかも教えなさいよね”
なんて、勝手な事を考えながら相手を観察していたら、バッチリ目が合っちゃって、思わず目を逸らしてしまった。
むーっ、なんかまだ見られている気がする…。
心理作戦ってヤツかな。
選手同士で握手した後、じゃんけんで勝った私は、迷いなくサービスを選択。
主審からシャトルを受け取り、対戦相手同士で練習を始める。
いつものことだけど、練習中ただ打つだけだとつまんないので、ちょっと体制を崩したふりをして、3打目に相手の左後ろめがけて強めのショットを入れてみる。
すると、相手はスッと軽やかなステップで左足を引いて半身になり、難なくバックハンドで返球されてきた。
“ふーん、ユウちゃん、やるじゃん”
練習が終わり、試合開始の主審のコールが始まる。
「オンマイライト 日野美稀選手 小学 6年生 日野バドミントンクラブ、オンマイレフト…」
隣のコートでは男子の決勝戦が先に始まったらしく、主審の声が一瞬聞き取りにくくなるほどの歓声が上がる。
“ダメダメ、集中しなくちゃ”
私は目を瞑り、一息深呼吸する。ママに教えてもらったおまじない。
「プレイ」
主審のコールとともに、私達の物語が始まった。
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