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side大江
突然のことに驚いた。
「……なんで、わかったんすか……」
──体調の話なんて今日は誰とも話してないし、藤本さんは特に気にしてないと思ってたし。ていうか、大江君……初めて名前呼ばれた気がする。。。
最後の名前の部分に1番驚いている自分に驚きだ。普段(俺限定で)まったく表情にも声にも抑揚がない彼女の、少し焦ったように上ずった声を聞いて、なぜか急にこちらも焦りだした。
「……藤本さんって、そのー、俺のこと嫌ってますよね」
「っ──え、ど、どうして!?」
「だって、なんか避けられてるし、睨まれてるし……。他の人の時と、態度全然違うし」
あれ、なんか後半すねた子供じみた事を言ってるかも。なぜか今なら大丈夫な気がして、正直に聞いてみたくなった。
「──っ」
狼狽える彼女の頬が紅潮している。怒っている……わけではなさそうだが、心なしか震えているようにも見える。こんなに彼女のことを凝視したことは未だかつてないだろう。だからなのか、不思議な感覚だった。目を合わせようとしない彼女に、こちらを向いて欲しくなった。
「何にも言わないってことは、そういうことなんですね……」
敢えて注意を引くようなことを言ってみた。俺はなんでこんなに意地になってるんだろう。
「ちがうの──」
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