一章

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side大江 繋がった思いに安堵が生まれた。ついさっきまで敵意にも似た感情しか持っていなかった相手に、自分が好意を寄せていたことに驚愕した。もしかしたら振り向いてもらえないことで意地を張っていた、のかもしれない。なんとも幼稚な態度だったと反省している。 目の前で照れながら微笑んでいた彼女が、あ、と声を漏らした。そして俺の頬に手を伸ばしてきてこう言った。 「そういえば、熱がありますよね?……あ、やっぱり!こんなに熱いじゃないですか!」 「ばれましたか?1日くらいなら保つと思ってたんですけど、なかなかに辛くなってきました」 人はよくできたもので、他のことに夢中になれば忘れられるのに、思い出した途端に症状が返ってくる。さっきまでフワフワと軽かった気持ちから一変して、ズーンと身体中に重みを感じた。これは本格的にやばいやつだろうか。 へらっと力なく笑ってみせると、慌てふためいたように彼女が立ち上がった。同時に頬にあった手が離れていった。 「待っててください!私鎮痛剤持ってるから!あれ、風邪薬の方がいいのかな……ね、どっちがいいですか?」 ドアに向かって歩こうとする彼女が振り返った。こんなにも自然に話しかけてくれるようになるもんだなぁと、しみじみ耽っていると、怪訝そうな彼女が戻ってきた。 「ねえ、大丈夫…?」 「なあ、遷っちゃったかなぁ?」 「へ?」 「熱……」 心配そうに覗き込む彼女に手を伸ばした。触れた頬が熱い。 「ほら、やっぱり」 「あ、こ、これは……!」 違います!と赤くなる彼女が愛おしくて、あったかい気持ちが体の内側を侵食していく。これはいったいどっちの熱なのか──。
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