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「財布なら何か書いてあるもの、入ってませんかね?」
運転手が気の毒そうに声をかけてきた。
「そうですね……」
でもどうしても他人の財布を覗くという手段には抵抗があり、仕方なくバッグのポケットを探る。
手に当たった紐のついたホルダーを引き出した僕は、そこに記憶と同じ顔写真を見た。
“商品企画本部 江藤奈都”
……間違いない、この名前だ。
それは、社員証でもあるIDカードだった。
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