皆川編 迷子襲来-2

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しかし、漏洩問題の被疑部門の社員と接触できた偶然を喜んでいる場合ではない。 この状態でどうやって情報が引き出せる? 情報が得られなければ、ただの重い物体だ。 酔っ払いはとにかく重い。 肩をほぐしながら横目で見ると、“ただの物体”は隣ですやすやと安らかな寝息を立てている。 運んだ際に身体に当たった柔らかな感触を頭から追い払い、彼女の住所を探すべく鞄に視線を戻す。 財布には手をかけたくないし、カード類にも大抵、住所が記載されたものはないだろう。 ならばどこに向かうべきか? 彼女の素性はある程度知れたものの、僕の部屋は有り得ない。 かといって路上に捨ておくわけにもいかない。 そうなると、このような場合に世間一般でもっともよく使われる場所──ホテルしかなかった。
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