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自販機の前で、彼女の事を考えた。
何が喜ぶかな。
彼女はオレンジジュースが大好きだ。
俺はオレンジジュースと、コーラを買った。
薄暗くなってきた、廊下を歩く。
俺は何故か、鼻歌を歌いたくなるほど気分が良かった。
部活に充実感を感じたのは初めてだった。
演劇、もしかしたら楽しいのかもしれない。
そう感じながら、俺は部室のドアを開けた。
カエデ…?
カエデは、机に顔を突っ伏して寝ていた。
肩が上下して、小動物のように丸くなっている。
いつもと逆……。
俺は、彼女の顔を覗き込んだ。
睫毛長いな…。
俺は、そのまま彼女の唇に目がいく。
心臓がドキッと音を立て、俺の思考回路を止めようとする。
…いや、まて変態。
自分にそう言い聞かせる。
少し寝かせよう。
俺は、さっき彼女が開けたカーテンを閉めようと窓に近づいた。
薄暗かった空はすっかり日が落ち、もう真っ暗だった。
上を見ると、星が綺麗だ。
沢山のダイヤモンド、美しい光。
不規則に散りばめられている光の海。
ロマンチックな言葉を思い浮かべながら、俺はあのセリフを口ずさむ。
「…僕の知らない世界に連れて行ってください!地球から消えてしまいたい…!僕は、地球を捨ててしまいたい…!」
俺は身を乗り出した。今日は自分がおかしく感じる。
演劇に出ることを引き受けたり、いつも以上にカエデを意識したり、夜まで起きていたり。
星を見て気分が高揚したり。
「…カエデの知らない場所に連れていくよ。だから、俺とカエデがデートできますように…。」
夜空に願うように俺は呟いた。
俺は幻想世界にでも連れて行かれたのか、ハッと自分が恥ずかしい行動をしている事に気づく。
夢見がちかよ…。
俺は彼女をみた。聞こえてないかの確認だ。
彼女は小さく寝息を立てていた。
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