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帰り道、雪がポツポツと降っていた。
俺とカエデは並んで歩く。
「ヒイラギくん、演劇する気無いでしょ?」
カエデは隣でポツリと呟いた。
俺が寝てしまう部室は、演劇部のものである。勿論、俺も部員である。
「んーあるよー。」
返事はしたものの、確かに俺はあまり演劇に興味が無かった。
部室で本が読み放題、顧問が図書室の管理者で、本借り放題。
部室にある、演劇の題材になる小説も読み放題。
つまり、不純な理由だ。
「…演劇しててさ、その…感情が伝わるって凄いと思うじゃない?」
彼女は、フフッと笑うとそう言った。
「…文章にしか表せられない感情ってあるじゃない。ヒイラギくん。それと一緒で、演劇でしか伝えられない感情ってあると思うの。…あ、えっと……。」
彼女は、1人で話していることに気づいたのか、俺をパッとみた。
そして、顔を赤らめた。
「ごめん…演劇のスッゴイ所、伝えたくて暴走した…!」
彼女は、既に赤い頬を更に赤く染めた。
なんだか自分まで照れてしまう。
俺がここにいる1番の不純な理由。
それを彼女に話したら、カエデは照れてくれるだろうか。喜んでくれるだろうか。
…それとも、嫌われるだろうか。
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