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「あれ…俺の方が先だったのか…。」
次の日の放課後。
いつも部室に来て、発声練習をしている彼女は見当たらなかった。
今日は、俺が先か。
珍しい…。
俺は、さっそく小説を読み始めた。
今回は『星に行きたいと願う僕』という小説だ。
題名の通り、主人公が夜空に願うシーンがあるのだが俺はそのシーンが大好きである。
親の暴力に耐えかねた主人公が、こう言う。
「…僕の知らない世界に連れて行ってください!地球から消えてしまいたい…!僕は、地球を捨ててしまいたい…!」
「……ヒ、ヒイラギくん…?」
「…あ。…えっ、と…。」
カエデが、部室の入口に立っていた。
俺は小説を机に置き、立ち上がってセリフを口にしていた。
3秒ほどの沈黙が起きる。
「…好き。今の。」
たちまち、カエデは笑顔になった。
青春真っ盛りの高校生の俺は、「好き」と聞くだけで胸が強く鳴る。
なんだか恥ずかしくなって静かに席に座った。
演劇部だが、演劇はしたことない。
いつも彼女の一人芝居をサポートしている。
演劇を本格的にやっている彼女の前で、セリフを言ってしまった。
それは、とても恥ずかしく感じてしまう事だった。
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