光の時代の始まりに~ある士官候補生の卒業文集から~

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光の時代の始まりに~ある士官候補生の卒業文集から~

 過去の戦争で人は、 武器を使い、 馬をあるいは車を走らせ、 弾丸や砲弾を打ち合い、 殺しあった。 だが、 所詮、 彼らは原始的な刃物と火薬と鉛玉でしか敵を殺し得ていない。  なんと野蛮でロマンの無いことか。  悲しいかな、 今もほとんどの軍隊は、 もちろん我々も含んで、 その延長上の武器、 兵器を用いている。 有史以来、 何千年という時を経ても人の戦争なぞ変わりはしないのだろう。  だが、 もし変わり得る要因があるとするならば。  ありとあらゆる戦場でタクティクスを、 オペレーションを、 ストラテジーを変更せざるを得なくなる程の、 驚くべき“何か”があるとするならば。  それを果たして人は使いこなせるのだろうか。    有史以来戦いの根底を変えれない我々に、 刃物と鉛玉しか使いようのしらない我々に、 その“何か”の真価を見いだせるのだろうか。  奇しくも私は士官候補生だ。  国防の未来を託された、 新たな世代だ。  加速度的に進歩する技術の海を泳ぎ、 その中に沈む無加工な真珠を選び出すことを任された世代だ。 ならば、 私たちは“何か”を見いだし、 その真価をも見いださなくてはならない。 国家の安寧をもたらす“何か”を。 戦場をひっくり返す“何か”を。
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