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「絨毯(じゅうたん)も無いようなところで寝られるか」
「絨毯? 笑わせるな。あんたはもう貧民街の住人なんだ。欲しいものが何でも手に入る暮らしは終わったんだよ」
「そ、そうだけど。さすがにこれは」
「ぐだぐだうるさいな、明日は早いんだからもう寝ろよ」
うざったい、といった様子で耳を塞いだアカネは干し草の寝台(ベッド)に顔を埋(うず)めてしまう。
(この俺が、地面で…寝るだと……)
冗談じゃない。こんな酷い扱いを受けたのは初めてだ。
――違う。彼らは自分に、追っ手から逃れるための場所を与えてくれた。それだけでも感謝すべきなのだ。
心の深層で起こる葛藤から抜け出せない。
「ゴホゴホッ、どうすんだ。寝ないのか?」
「寝るに決まっている。今日は疲れたから」
レノルフェの言葉が決め手となって、フィオはとうとう土の上に身を横たえた。
(冷たくて固い……氷のようだ)
昨日まで柔らかい寝台(ベッド)で寝ていたのに。
いや、この程度で音を上げていたら貧民街での生活など、到底耐えられないはずだ。今までの自分が世界を知らなさすぎただけ。そう自らに言い聞かせ、フィオは腕を枕代わりにしてゆっくりと瞼を下ろしていった。
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