皆川編 迷子、再び

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そんなことを考えていると、突如彼女が驚きの行動に出た。 何を思ったのか、肩にかけたバッグをごそごそと探って財布を取り出したのだ。 やはり素面でも少しおかしな女らしい。 「あ、あの……」 胸の前でしっかり財布を握りしめ、彼女がか細い声で切り出した。 「あの、バー……いえ、その」 それを聞いて僕はあやうく吹き出しそうになった。 バーとホテル代を気にしているらしい。 気にすべきはそこではないと思うのだが。 お灸をすえるべく、赤くなったり青くなったりしながらしどろもどろで財布を揉み絞る様をしばらく無言で放置する。
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