皆川編 迷子、再び

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迷子の一件から数日が過ぎた。 その日、僕は昼までの予定で彼女の会社を訪れていた。 午前中に幾人かの部門責任者と面談をしたあと、僕は漏洩問題に関する調べものをしていた。 まず開いたのはバーで聞かされた迷子の愚痴に出てきた名前、総務部の堀内という女。 受付は総務部所属となっている。 人気女優に似た、甘めの美人だ。 綺麗かもしれないが、味のない顔だなと思う。 そこで僕はふと迷子の泣き顔を思い浮かべた。 頬と鼻を真っ赤にしたあの泣き顔はかなり酷いものだったが、味がある無いの話なら、あっちの方に軍配が上がる。 ただし初っぱなから泣いていたので、彼女の普段の顔がどんなものか、僕は知らない。 まあ、それはいい。 人事調書に思考を戻す。
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