皆川編 迷子、再び

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「……」 その効果もあってか、彼女は縮み上がって直立不動だ。 バーで果敢に恥を晒したのは、かなり酔っていて僕の印象など見えていなかったに違いない。 素面の今は、顔にはっきり“このひと苦手”と書いてある。 苦手で結構。 沈黙を楽しみながらゆったりと腕を組み、彼女を眺めた。 声で予想した通り、彼女の目は赤く、鼻の頭も赤くしている。 泣く寸前の顔だ。 あれから二週間ほどが過ぎたのに、今でもこうして時折泣いているのだろうか。
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