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この時までは、僕はこの場を穏便に撤収するつもりだった。
しかし彼女の脚──太くも細くもない、彼女らしく何の特徴もない平凡な脚だが、触り心地がいいのは知っている──にあるものを見たとき、無性に意地悪したくなってしまった。
脚に走る一本の線が、ストッキングの存在を声高に叫んでいたのだ。
いじって下さいと言わんばかりに。
ムズムズしつつ、無言で財布を拾い、立ち上がる。
「財布、落ちましたよ」
手のひらに財布を乗せてやっても、彼女は真ん丸い目で僕を見上げたまま口もきけない様子だ。
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