皆川編 迷子、再び

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年齢と入社年月を確認した僕は、なんとなく引っ掛かりを感じた。 中途採用は珍しいものではないが、疑り深い嗅覚が反応したのだ。 「中途採用の場合、前の勤務先での状況は確認していますか?」 「ヘッドハンティングならそうですが、受付まではさすがに……」 「面接での様子は?前勤務先の退職理由は当然質問したでしょう。ここにはあまり何も書かれていませんが」 「さあ……」 人事担当者の返答は曖昧だった。 採用面接時の調書には、彼女の顔やスタイルについてふやけた感想が書いてあるだけで、人物評価のための手がかりがほとんどない。 おそらく面接担当のオッサンが鼻の下を伸ばして即採用を決めたのだろう。 一応それまでの経歴を確認した方がいいだろうと、履歴書に記載されたいくつかの基本情報を頭に入れた。
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