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それから疑わしい部署の社員履歴をいくつか確認したあと、まだ少し時間に余裕があったので、もう一名だけ、最後に開いた。
先週、既に一度目を通していた東条だ。
基本データは確認済みで再度見る必要は無いといえば無いのだけれど、迷子から得た雑情報を踏まえ、改めて眺めてみる。
東条敦也、33歳。
一言で表現するなら“一点の傷もない”経歴だ。
有名進学校から一流大へ。
裕福な家の出なのだろう。
企画本部の前は広報室に八年。
エリート部門からエリート部門へ、営業などの下積みはなし。
この調書の印象では、人生で一度も躓いたことが無さそうだった。
写真にはモデルのように整った顔立ちの男が柔和な表情でカメラに収まっている。
「苦労知らずのプリンス、か」
ウブな部下がのぼせ上がるのも頷けるなと、若干皮肉混じりにつぶやく。
ただ、こういう育ちの良い聖人君子タイプは、わざわざ危険を冒して小金を稼ぐタイプではない気もする。
しばらく東条の綺麗な顔を眺めたあと、人事部の課長に誘われ、コーヒーを飲みに社食に向かった。
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