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パイナルの墓参りを終えた二人は中庭の噴水のへりに腰を掛けた。
以前はここでシローネにひっぱたかれたことを思い出し、くくっと喉を鳴らす。
たがテスカにはひとつだけ気がかりなことがあった。
「ーーなあ、シローネ」
「なんです」
「その。足の無い私を、恐ろしくはないか……?」
おずおずと尋ねると、シローネは一瞬キョトンと目を丸くして、それからゆっくりとかぶりを振った。
「どうして。
だって失われた足はテスカ様の心。
私をお守り下さった、確かな愛の証し。
だのになんの恐ろしいことがありましょう」
そう言って微笑んだかつての乙女は、彼の足もとにひざまづいて髪を揺らし、その真新しい義足にそっとキスをした。
〈龍は火炎獄に嗤う 完結〉
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