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「ただいまー」
「おかえりー」
元気よくドアを開けたらいい匂いがして、パタパタと駆け寄ってきてくれる恋人が待っていてくれるなんて。
なんて幸せで贅沢なんだろうとホクホクと噛みしめながら、相変わらず華奢なままの司をぎゅっと抱く。
「まだ外寒いんだね」
「朝晩はねー、冷えるからねー」
「颯真、つめたい」
耳元でたどたどしく呟いた司が、むぎゅ、と抱く腕に力を込めて。
「あっためてあげるよ」
照れて笑った声でそんな風に恥ずかしそうに言うのが愛しくて、にっこりと笑う。
ありがと、と呟き返したら、ぎゅー、なんて効果音付きで司を抱き締め返して。
「いい匂いだね。晩ご飯?」
「今日はね、豆乳うどん」
「いいねぇ、あったまるね」
「ん。早く食べよう。お腹空いた」
にこり、と笑って頷いた司に促されてようやく互いに腕を解いたら、短い廊下を歩く。
「そういえばさ。3連休にしたいこと、ホントにないの?」
「ない」
「……そっか」
たいして悩みもせずにキッパリと言い放った司に、やれやれと苦笑してからコートを脱いで鞄を床に置く。
「とりあえず食べよ。あっためすぎたら豆腐になっちゃう」
「そだね」
へたくそな話の逸らし方をする司の頭を、分かってるよと言うかのようにぽふぽふと叩いてやって。
キッチンに消えた司がほかほかと湯気の上がる丼を2つ手にして戻ってくるのを、こたつの中でそわそわしながら待った。
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