たとえば狂愛だったとしても

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 結局支払いを済ませた後に新海さんがすっ飛んできて、オレの顔を見るなり深々と頭を下げてくれた。 「本っ当にごめんなさい。翔太のこと、助けてくれてありがとう」 「いや、もう、ホントに……」 「ホントに、道路に飛び出すなんて……」 「おかさん?」  きょとんとしてた翔太に、お父さんの時と同じように、優しくて軽くてだけど愛情のめいっぱい籠もったげんこつを食らわせて。  大泣きする翔太を抱えたお父さんと一緒にもう一度頭を下げたら、司に意味深な目配せをして帰って行って。  台風みたいだった新海さん達を呆然と見送ったら、取り残された駐車場で司と二人、お互いに顔を見合わせるしかない。  気まずいというよりも呆気に取られたみたいな沈黙を、取り繕うみたいに軽く咳払いしたら、窺う目をした司にそっと微笑ってみせる。 「………………とりあえず、オレん家、行こっか」 「……ん」  小さく頷いてくれた司の頭を癖でぽふと叩いてから、ずる、と痛い足を引きずったら、オロオロした司がぎゅうっとオレの手を握った。 「肩」 「ん?」 「かす、から」  さっきまでのやり取りでどっかへ行ってたはずの涙が、またぶり返したらしい。  潤んだ必死の目がオレを真っ直ぐ見つめてくるのにホッとしながら、ありがと、と呟いて甘えることにした。  華奢な肩に腕を回したら、一生懸命な目をして歩き出そうとする司の今にも泣き出しそうな顔が痛々しくて。 「……ねぇ、司」 「……ん?」 「…………ごめんね」 「……なんで? なんで、颯真が謝んの?」  結局はべそべそと泣き始めた司の、オレを支える手に力がこもる。 「オレが…………ッ、オレが……逃げてたのが、悪いのに」 「……うん、でも。……事故とか言われて、びっくりしたんじゃないかと思って」  ごめんね、と重ねたら、ぶんぶん首を振った司が、ぎゅうとオレを強く----確かめるみたいに強く支えてくれる。 「こわかった。ホントに……そうま、いなくなったら、って……こわかった」 「うん、ごめんね」  もう一度謝ったオレに、だけどやっぱり首を振った司が、ぎゅっと唇を噛んだ後にそっと瞬きをして。頬を綺麗に伝った雫にみとれていたら。  濡れて束になった睫毛が震えて、泣き濡れた瞳がオレを捕らえた。
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