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僕の辛辣な物言いにようやく彼女も反抗の色を見せ、憤然と顔を上げた。
「だって彼女と争ったって得なことないじゃないですか。部下より恋人の方が有利に決まってます。東条主任に悪口を言いつけられたら、嫌われるのは私ですよ」
「まあ、あなたでは勝ち目はないでしょうね」
僕を睨み付けていた目がみるみる赤くなる。
容姿の話だと思ったらしい。
“こんな顔じゃ、勝負になりませんっ”
またあの台詞を思い出して顔が歪んだが、吹き出すのはこらえた。
「戦闘能力の話です」
「……」
もう少し甘いフォローをしてやればいいのだろうが、僕の語彙にはその類がないので仕方がない。
「あとは?」
「私が最近元気がないのを彼が気にしてるって……堀内さんが言ってたんです」
彼女はしょんぼりと下を向いて訥々と語り始めた。
東条に気持ちがばれてしまうのではないかと、職場で気を抜けなくなってしまったというのだ。
体調が悪い日、仕事の失敗で落ち込む日、それらがすべて堀内嬢の意地悪い邪推と嘲笑のネタになるのがしんどい、と。
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