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「息がつまるというか、悪循環に陥っちゃって」
「それが彼女の狙いでしょうね。あなたを自滅させて、東条主任との関係をぎくしゃくさせるのが」
彼女には悪いが、堀内嬢の嫌がらせは僕にとって好材料だった。
「要するに働きにくくなったと、そういうことですね」
「そうです……」
あの二人に関して、人事の真っ当な調査よりもはるかに楽に、しかも鮮度の高い情報を得られるルート。
迷子をみすみす逃すのはもったいない。
「他人を踏みにじって快感を得るタイプの人間にカモにされていると」
「……」
「まあ開き直ればいい話ですが、その状態を解消する手っ取り早い方法はあります」
酔った時は大安売りだったが、基本的にこの迷子は真面目で臆病だ。
一気に僕推しでいくと一目散に逃げられるだろう。
堀内嬢への恨みを焚き付けてから、迷子の拒絶反応を予測しつつ理屈の順序を踏んでいく。
「恋人を作ってしまえばいいんですよ。そうすれば相手は関心を無くすでしょう」
彼女はポカンと口を開け、呆けた顔で僕をしばし見つめた。
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