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しばらくして彼女はふくれ面で僕を睨み付けた。
「簡単に恋人を作れるならとっくにそうしてます。全然できないって、バーでぶちまけたじゃないですか」
「確かに」
バーで聞かされた率直すぎる数々の嘆き節を思い出して顔がひくついた。
見栄のなさは素面でもブレないらしい。
「百歩譲って相手ができたとしても、まだ東条主任に気持ちがあるのに失礼じゃないですか」
「本物である必要はありません。問題が解決するまでのダミーでいい」
善良な子羊は難しい顔でしばらく黙りこんだ。
ここは重要ポイントなので急かさず、彼女から反応があるまでじっと待ってやる。
やがて、彼女はいかめしい顔で首を振った。
「そんな贅沢ができる女なら、三十年も苦労してません」
その通り。
導入部を終え、ようやく僕は捕獲器の覆いを取った。
「なら、僕と付き合っていることにすればいい」
広がる静寂の中、ドサリとバッグの落ちる音がした。
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