皆川編 偽装契約

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この呆けた顔を眺めるのは今日何度目だろう。 手の神経同様、彼女の顔面筋はしょっちゅう緩むらしい。 彼女はかなりの時間停止していたが、突如真っ赤になり、それからブルブルと首と手を振った。 「いやいや……まさか、そんな」 迷子にとって、僕は得体の知れない嫌味男。 至極正しい拒絶反応だ。 「数ヵ月後には契約満了で僕はあなたの会社からいなくなります。その頃には問題は解消しているでしょうし、後腐れもない」 別に嘘を並べている訳ではない。 漏洩の犯人は間違いなく解雇となる。 おそらく堀内嬢。 状況により東条も連座解雇の可能性はあるが、その場合、恨むべきは彼であって僕ではない。 「僕を隠れ蓑にすれば、落ち込んでいようが元気がなかろうが僕のせいにできる。東条主任と結びつけられることはなくなります」 「でも……」 それにしても、彼女がためらえばためらうほど僕のモチベーションが上がるのはなぜだ?
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