皆川編 偽装契約

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広いホールに二人、出口は遠い。 ここは最上階で、めったにエレベーターは上ってこない。 承諾するまでは逃げられない状況を選ぶあたり、我ながら悪どい。 「それにもしあなたが言うように東条主任の目に女として映っていないなら、男の存在を見せることは意識するきっかけとして効果的でしょうね」 きっかけは作るが、東条が迷子を選ぶかどうかは僕の及ぶ範囲ではない。 確約事項ではないので、語尾の“でしょうね”で抜け穴を作る。 とはいえ、堀内嬢退治だけでなく東条の気を引くサブ効果も期待できるとなると、迷子にすればおいしい話のはずだ。
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