染まる

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翌朝、昨日のことはまるで何事もなかったかのような顔をした彼女に起こされ、僕は学校へ向かった。流石に家に置く訳には行かないけれどたまになら来ていいという彼女の言葉に甘え、連絡先を交換した。 月に何度かのペースで僕は彼女の家を訪れた。彼女は優しく迎え入れてくれた。そのうち彼女の方から連絡が来るようにもなった。その場合は大抵彼氏の愚痴だ。 普段の彼女は大人しく、僕の話を退屈がらずに聞いてくれる優しい人なのだが、彼の話題になると人が変わったようになる。 些細なことで怒るし泣くし笑う。彼が風邪をひけば僕のことなどお構いなしに飛んでいく。 いつだったか別れてやると泣きながら言った直後に、彼からのメールで小躍りしカーテンに包まりだしたのには流石に呆れた。 彼女の変わりようは、新種の病気にでも罹っているのではと疑いたくなるほどだった。 けれどそんな風に彼女に振り回されるのは決して嫌ではなかった。
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