序章 「鋼鉄に宿る意思」

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死病、その名が示す通り一度感染してしまえばどんなに身体の丈夫な人であろうと死に至るという恐ろしいものだ。死病は発生すると瞬く間に大陸全土へと広がり、人間や魔族だけでなく、自然に生きる動物達にまで感染し生命を奪っていった。  次第に人々は、突然姿を現した原因不明の病気によって飢餓に陥り、いつかかるか分からない恐怖に襲われその心を弱らせた。  そして何より原因不明という現実が人々を疑心暗鬼にしたのだ。  ある人曰く、この病は魔人が扱うマナ魔法の乱用が生み出した公害であり、魔人側はその事実を隠蔽するために人間が扱うマナ蒸気機械の所為にしていると。  またある人曰く、この病は人間が新しく開発したマナ蒸気機械の暴走が引き起こした公害であり、人間側はその事実を隠蔽するために魔人が扱うマナ魔法の所為にしていると。  こうして、流れた根拠のない情報はすぐさま広がっていき、心を弱らせた人々をいとも簡単に信じさせていった。  そして人々を憤怒させた。  人間を殺せ。魔人を殺せ。  その両者に芽生えた殺意は、この戦争――鋼魔戦争の引き金になった。  戦争開始直後は、魔人のマナ魔法と持ち前の身体能力の前に為すすべもなく敗北した人間だったが、何度かの失敗を繰り返し、魔人に対抗する一つの手段を生み出した。  造られたのは一体の兵器。人間の忠実な僕となり戦う騎士。  その身体は鋼鉄で構成され、魔人が使うマナ魔法にも耐えることができる。     
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