序章 「鋼鉄に宿る意思」

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 戦争をするためだけに造られ、戦いにしか存在意義を見出すことができない、意思を持った鋼鉄の騎士(デュラハン)。  それがこの私の正体だ。  私は幾度となく戦場へと駆り出され幾万の魔人を殲滅してきた。  私は戦うだけの存在だ。何も考えずに戦ってればいい。そう分かっているのに殺せば殺すほど幾多の疑問が心の中を埋め尽くしていく。  殺しあうことになんの意味があるのか。殺し合いのその先にある未来は明るいものなのだろうか。  私自身出来るのならば殺したくはない。どんなに造られた存在である私達にも心は存在するのだ。殺しを行うことで人間同様に罪悪感等の感情は発生する。  そして、無残に死んでいく人を見るのは嫌だった。  だがそれでも私は自分の気持ちを抑え込み、人間に命令されるがまま魔人を殺し続ける。  魔人を殺せば私は評価され、逆らえば私は己の中に組み込まれた自爆装置を作動させられ死ぬ。認めたくはないが魔人殺しだけが私がこの世界に生きている証明。  さらに、戦争が終われば私の存在意義は無くなり、棄てられる。それが兵器の末路だ。  こんな先の真っ暗な未来しか見えない道だが私は歩いている。  ただひたすら生き続けていくためにーー     
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加