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2030年11月20日 テレビの時報がAM7:30を知らせるのを確認してから家を出る。今年は例年よりも強力な寒気が流れ込んでいるようでいつにも増して凍てつくような寒さだ 「めちゃくちゃ寒いじゃねえか。」 そんな陳腐な悪態をつきながら最寄り駅への道を歩く。歩いている人々は皆、コートにマフラーをして、the 防寒といった様相だ。 そして誰も彼もこめかみから後頭部にかけてAIACを着けている。見慣れていながらも奇妙な光景だ。 「昔の人が見たらこれは笑うな。」 そんなことを思っていると、 「おーい。大地ー。」 自分を呼ぶ声がする。自分でも眉間に深い皺が寄っているのがわかる程眼をひそめた。 「人が多いんだ。大声で名前を呼ぶなよ、恥ずかしい。」 齋藤 瑠衣、よく言う幼なじみだ。都内の同じ高校に通っている。 「別にいいじゃん。幼なじみなんだし。」 「違う。そうじゃない。幼なじみとか関係ない。」 非常にくだらないが毎朝これと同じようなやり取りをしてから学校へと向かう。一種の習慣だ。 「やっぱり大地は着けないんだね。AIAC。」 瑠衣がこめかみの辺りをつつく。 「ああ。俺はいらないからな。」 そう。俺はAIACを着けていない。 「これ以上強くしてどうするんだよ。」 2026年岡嶋重工が発表したAIACは意思増幅回路であると同時に、抑制も担っている。 当時、AIAC発表と同時に意思現象力の検診が行われた。検診結果は三段階で、数字が小さい程強力であることを示す。自分は ステージ1 その中でも現象力の値が非常に高かったのだ。 「強くするんじゃなくて抑えるの。」 「だから言ったろ。経過観察なんだって。着けないんじゃなくて着けれないんだ。」 経過観察。それには理由がある。 2028年3月16日-自分と同様のステージ1の 野村 一郎 という人物がAIACを装着し、意思現象力を発動したところ、力が暴発に近い暴走を起こした。あまり詳しい報道は成されなかったが、その野村一郎は人の形を留めていなかったらしい。 それを受けて岡嶋重工はステージ1と診断された者にはAIACを配布せず、そのままの状態で経過観察を行っている。 --- プルルルルとけたたましい音を立てて電車の発車が告げられる。混み合った車内では携帯端末が、本が、新聞が浮かんでいる。そんな非日常な日常を自分達は過ごしていく。
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