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「ねぇ、聞いてる?」
俺の顔を覗き込むように眉をひそめる彼女がいる。
「……聞いてない。なゆの話、なげーんだもん」
「もう!ちゃんと聞いてよー。こんな話、ひーくんにしか言えないんだから」
………俺にしか言えない、か。
スマホゲームを中断して、ソファへ寝転んでいた身体を起こす。
「ただ兄貴とのノロケ話を聞かされてるとしか思えないけど」
「これのどこがノロケなの!」
「ちょっと式の打ち合わせに遅れてきただけで、『私のことなんかどうでもいい』って本気で言ってんの?兄貴がどれだけなゆのこと好きか、今更言わなくたってわかってんだろ」
そう、今更なんだよ。
なゆの気持ちも。
俺の気持ちも。
すると、玄関のドアが開き、バタバタと足音が近付いてくる。
………ほらね。
最初からなんの心配もいらねーんだ。
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