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「穂積、竹林くんがさ、昨夜のことが暴行罪になるかって心配してたけど……」
ふふっと穂積が低い声で笑いだした。
「いい人だよなあ、竹林くん。思ってたより男前だったし。ユートをみつけたときは『人を殺す覚悟をした人間の顔』になってた。でもあの人、喧嘩とか絶対やったことないだろ。それはもう綺麗ってほどの、正しいフォームのぐるぐるパンチでさ」
言葉の途中で、我慢しきれない笑い声がくっくっと聞こえてくる。
「そんなパンチじゃ、あたらないよって思ったのに、ものの二発ぐらいで、ごつい相手倒しちゃってさ。無駄にすげえ威力なんだよ。あとはもうやりたいほうだいっていうか」
誠一郎の華麗なぐるぐるパンチを見たかった、と優人は内心思う。
「ただ我にかえって、竹林くん、あの場で警察と救急車呼ぶっていったんだよ。俺があわてて止めたんだ。あそこには家族や職場にゲイだって知られたくない人間だっていっぱいいるのに、事情聴取なんて無理だろ。それでイベント主催者に間に入ってもらって、ユートの身に起きたことも、竹林くんが殴ったことも、お互いおおごとにしないってことで話つけたんだよ」
安心していいからな、とたのもしい声でいってくれた。
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