ヤれない事情2

4/24

803人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
 誠一郎は見えている口元だけで、苦しげに話した。唇がひくついている。 「僕自身はキャリアなので、すぐに病気として発症することはありません。でも僕の血液や精液、傷口の接触をとおして誰かに感染させることはあります。そしてその相手は急性肝炎を発症する可能性があります」  優人はしばらく言葉を失っていた。 「……そしたら、竹林くんは一生セックスできないの?」 「セックスだけじゃないです。ディープキスもダメです。唾液や涙、汗だけで感染することはありませんが、口の中にはよく傷があるものなんです。だから、僕は喧嘩もしちゃいけないんです。僕の血液が人の傷口に触れるようなことがあったら、相手に感染させてしまうかもしれないからです。激しいコンタクトのあるスポーツも危険です」  優人は頭の処理が追いつかず、ぽかんと口を開けて、目隠しした誠一郎の顔をみていることしかできない。 「ただ、まったくそういうことができないわけじゃないんです。抗体のある相手となら、できます」 「抗体のある相手って、同じキャリアの人ってこと?」 「いえいえ、そんな限定じゃなくって。あらかじめ予防接種を受けてHBVの抗体をつくっている人とだったら、感染させずにできるんです」
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

803人が本棚に入れています
本棚に追加